六時間目の終了後すぐに担任の先生がやってきて、帰りの挨拶も終わり手早く身支度を整える。

迎えに来るとは思わないけれど、万が一に備えておく。今日は掃除当番ではないし、委員会もないのでこのまま直帰してもなんの問題もない。


「梨乃、本当に一緒に帰らないの? きっと来ないよ?」
「いいから、早く靴箱に向かいなさい。一応あのふたりがよく使う階段は避けて一組の隣の一番端の階段を使うのよ」

声をかけると、アドバイスまでされてしまった。


「もう少し待って迎えが来なかったら駅に向かうけど、多分私の予想は当たるわよ」

意味深な台詞を口にする。

「……わかった。なんかごめんね」

そう言うと手をヒラヒラ振って見送ってくれた。


一組の前を通り過ぎ、階段を降り始めると、なぜか階上から女子生徒の黄色い歓声が聞こえた。


まさか、だよね?


ほんの少し疑問が浮かんだけれど、足早に階段を降りた。

走ると手当てをしてもらった足が痛むので急ぎ足で靴箱に向かい靴を履き替え、駅に向かう。

その時、背後で再び女子生徒の甲高い声が響いていたが気に留めず、正門前にある信号を渡る。けれどもやはり気になって角に隠れ、そっと正門を見つめた。


念のため、念のためよ。
あの声はファンの女の子のものじゃないかもしれないし。


そう言い聞かせたけれど、予想は簡単に裏切られた。