もしもナツさんが好きだと肯定されて私は友だち宣告されたら? 


……そんなの辛すぎて耐えられない。


想像するだけで、胸が鋭い刃物に切り裂かれたかのように痛み、思わず自身の胸元を手で押さえた。


それでもきっと、今の私にはその未来しかない。


好きな人の一番にはなれない。



「恐いのはわかるよ。ナツさんへの想いを知るのも自分の気持ちを伝えて、拒絶されたらって想像してしまうのもわかる。でも氷室くんの気持ちは氷室くんにしかわからないの。ちゃんと伝えて答えをもらわなきゃ、いつまでも片想いのまま動けないよ」

梨乃の言葉が深く胸に沁みこむ。正しいとわかっているのに従えない、足踏みをしてしまう自分がいる。


気づいたばかりの気持ちはとても大きく不安定で扱いづらい。

伝えたい、わかってほしいと思う一方でこんなにも重い大きな気持ちをぶつけるのに怯える自分がいる。


大事な思い出の女の子を捜し続けている雪華の負担にはなりたくない。

なのに身勝手な私は彼を独り占めしたい気持ちを捨てきれない。


仲の良い女友だちだと雪華は言ってくれる。この気持ちを伝えなければ一番近い位置でずっと傍にいられる。


それは逃げているのだろうか。


「……今は言えないよ。思い出の女の子を捜すのに協力するって言ったばかりだもん。その邪魔はできない」

小さく呟くとキツイ声で叱られた。

「なにを言ってるの。その女の子を捜すのと気持ちを伝えるのは別の話でしょ。選ぶのは氷室くんなんだから、ナナが遠慮する必要はないの」
「……わかってるよ。いつかはきちんと伝えたいって思ってる。でも今はまだ自信がないの。告白して嫌われたり気まずくなったらそれこそ耐えられない」
「ナナが決めたならこれ以上なにも言わないけど……恋にはタイミングがあって、ずっと我慢したら苦しくなるのよ。こみ上げる気持ちがあるならきちんと伝えなきゃダメなの。誰かを好きになるって素敵な出来事なんだから」


真摯な声が胸に真っ直ぐに刺さる。