ドキドキ?

一挙一動? 

そんなの出会った頃からずっとしてる。


大事にしてもらうと恥ずかしくなるけど、嬉しくて胸が痛くて泣きたくなる。


雪華について考えると鼓動が無意識に暴れだしてほかのことがなにも手につかなくなる。


無言でただ頷くとクスッと声を漏らして梨乃が小首を傾げる。

「その気持ちがなにかわからない? そんな想いを感じるのは氷室くんに関してだけでしょ? その意味がわからない?」

質問に瞬きをすると、目に溜まっていた涙が一粒零れ落ちた。


この理由のわからない不安定な気持ちの意味?
雪華に会って、声を聞く度に湧き上がる、心を占領する想いの正体?


「簡単よ、ナナは氷室くんが好きなの」


はっきりと耳に届いた親友の声に瞬きを繰り返す。


好き? 雪華を?


「もちろん恋愛感情の好き、よ」


恋愛感情? 

頭の中でその言葉を反芻した時、ドクンと鼓動が大きく跳ねた。


「私、雪華が好き、なの?」


そろそろと口に出した声は小さく震えていた。


『好き』


口に出した途端、その言葉が大きく存在感を増した。


一気に想いが拡がり、心を信じられない速さで侵食して温かな想いがどんどんこみ上げてくる。

名前を呼ばれて嬉しかった。触れられるとドキドキした。雪華の姿をいつも無意識に目でおってしまっていた。

灰色の目に自分が映るだけで胸がいっぱいになった。


その理由は明確だった。


「……梨乃、私……」

思わず親友を見上げるけれど胸が震えて声が出ない。


ああ、そうか。だからこんなに悲しかったんだ。


その瞬間、ストンとなにかが心の中に落ちてすべてが繋がった。