保健室のすぐ隣にある階段の一段目に並んで腰かけ、今日の出来事を洗いざらい話した。

三年生の嫌がらせを雪華と楠本くんが助けてくれて、雪華がお姫様抱っこで運んでくれて保健室で手当てをしてくれた事柄すべて。

ただナツさんの件は、彼の大切な思い出なので話せなかった。


そんな私の躊躇った様子に気づいたのか、親友が追求してくる。

「それ以外にもなにかあるんじゃないの?」
「……雪華の愛称の本当の意味って知ってる……?」


勘の良い親友に脱帽しつつ、曖昧な質問を口にすると、梨乃は片眉を上げた。

「……氷室くんにはずっと捜している女の子がいるって噂の件?」


思いがけない返事に大きく目を見開く。

「知ってるの!?」
「ちょっと、大声出しちゃだめよ!」

険しい表情で口を抑えられてコクコク頷くと、溜め息を吐いて手を離してくれた。


「……どうして知ってるの?」

親友の左腕を掴んで揺さぶると、困ったような表情を返された。

「昼休みにナナが保健室にいた時、授業に遅れるかもって言付けに来てくれた楠本くんから聞いたの」

これから必要になる話かもしれないから、と切り出されたらしい。


「梨乃ちゃんには伝えておきたい、って言われたの。楠本くんが氷室くんから話すように頼まれたんですって。保健室から帰ってきてからナナ、様子がおかしかったでしょ? その話が原因かと思って」
「……心配かけてごめん、ね」
「なに言ってるの、親友でしょ!」

優しい心遣いに胸がいっぱいになり、泣きそうになる。