「……傷が残らないといいけど」

ガーゼ仕様の絆創膏を貼りながら言われ、鼓動がどんどん速くなっていく。


「だ、大丈夫! こんなのただの擦り傷だし。重たいのにここまで運んで手当もしてくれてありがとうね」

早口で言うと真剣に私を見つめる彼と目が合った。逃れられそうにない強い視線にゴクリと喉が鳴る。


「……どうかしたの?」

いつもと違う様子にほんの少し不安を覚えて問うと、膝の上に置いていた両手を彼の両手で握られる。


「ちょっと長いけど聞いてほしい話があるんだ」

真っ直ぐに見つめられて頷くと、雪華がぎこちなく眉尻を下げた。


「俺の愛称、知ってるよな?」
「うん、雪華の外見と女の子への対応に対して付けられたんでしょ?」
「いや、今は愛称だけが独り歩きしてそう言われてるけど、元々は違ったんだ」
「どういう意味?」
「俺はこの愛称をつけてくれた女の子をずっと捜してるんだ」

目に言いようのない切なさが浮かび上がり、胸がギシリと軋んだ。


どうしてそんな目をするの? 
その女の子は雪華にとって特別な存在なの?


問い詰めるような言葉が口から飛び出しそうになる。