「本当にもういいから」
そっと声をかけると雪華は小さく首を横に振る。これは降ろすつもりはないという意思表示だろうか。
小山内さんが慌ててやってきた。
「大丈夫かい、ナナちゃん? 悪いね、ふたりに頼まれていたのに……」
申し訳なさそうに言われ、慌てて返事をする。
「いえ、気にしないでください。私がドジをして転んでしまったんです。小山内さんには用具の配布も手伝っていただいたんですから」
小山内さんにまでこの姿を見られるなんてそっちのほうがよほど恥ずかしい。しかもどんどん周囲に人が集まってきている。
ああもう、望んでいないのに最近こんな風に目立ってばかりだ。
「ナナちゃんを補佐に決めたのは雪華で、その代わりになんか誰もなれないのになにを勘違いしてるんだか。あんなにも条件にこだわっていた雪華が選んだ、たったひとりの女の子なのにねえ」
楠本くんが肩を竦めてのんびり言う。
「桜汰!」
「ハイハイ。いつまでも隠し通せる話じゃないんだ。きちんとナナちゃんに話せよ」
いつものへらりとした楠本くんとは思えない凄味のある口調に身体が強張った。そんな私の変化を感じたのか雪華が抱く腕に力を込めた。
「……わかってるよ。保健室に行ってくる」
「ナナちゃんと俺たちの担任の先生には五時間目に遅れるって言付けておくから」
そう言った楠本くんは普段通りだった。雪華は小さく頷いて保健室に向かって歩き出す。
さっきの話はなんだろう。
そっと声をかけると雪華は小さく首を横に振る。これは降ろすつもりはないという意思表示だろうか。
小山内さんが慌ててやってきた。
「大丈夫かい、ナナちゃん? 悪いね、ふたりに頼まれていたのに……」
申し訳なさそうに言われ、慌てて返事をする。
「いえ、気にしないでください。私がドジをして転んでしまったんです。小山内さんには用具の配布も手伝っていただいたんですから」
小山内さんにまでこの姿を見られるなんてそっちのほうがよほど恥ずかしい。しかもどんどん周囲に人が集まってきている。
ああもう、望んでいないのに最近こんな風に目立ってばかりだ。
「ナナちゃんを補佐に決めたのは雪華で、その代わりになんか誰もなれないのになにを勘違いしてるんだか。あんなにも条件にこだわっていた雪華が選んだ、たったひとりの女の子なのにねえ」
楠本くんが肩を竦めてのんびり言う。
「桜汰!」
「ハイハイ。いつまでも隠し通せる話じゃないんだ。きちんとナナちゃんに話せよ」
いつものへらりとした楠本くんとは思えない凄味のある口調に身体が強張った。そんな私の変化を感じたのか雪華が抱く腕に力を込めた。
「……わかってるよ。保健室に行ってくる」
「ナナちゃんと俺たちの担任の先生には五時間目に遅れるって言付けておくから」
そう言った楠本くんは普段通りだった。雪華は小さく頷いて保健室に向かって歩き出す。
さっきの話はなんだろう。

