歯医者に行くから付き合えない、と言う心配性な梨乃を見送って委員会に向かう。


場所は五階建校舎の三階、西の端にある二年十組、特進科クラスだ。
二組は三階の東の端で、この西棟には図書室に向かうなど、特別な用事がない限り足を踏み入れない。


この高校には普通科と特進科があり、八組までは普通科で九、十組は特進科になっている。

十組は成績上位者揃いの国立理系を目指すクラスで、授業内容は普通科文系の私には到底理解できない。


委員会開催教室は委員長、副委員長のクラスが指定される場合が多い。

三年生が委員長を務める場合がほとんどだが女子生徒たちの圧倒的な推薦により、今年の美化委員長は二年生になったという。


目の前の扉を開けた途端に向けられる、大勢の視線に少し怯む。


まだ時間には余裕があるはずなんだけど……なんでこんなに早く集まってるの? 
まさか時間を間違えた?


前回は開始時間前に集まる生徒は少なかったはずだ。

「……二年二組、原口です。もうひとりは用事があって不参加です」

素晴らしい出席率を疑問に思いつつ、学年と名前を名乗る。

「お疲れ様。プリントが置いてある好きな席に座って。もう少ししたら始めるから」

切れ長の二重が印象的な、スッキリとした細面の美形の男子生徒が委員長だ。

どうやら時間は間違えていないようだが既に後ろの席は埋まっていて、前から二列目の窓際よりの席か廊下側の一番前の席しか空いていないので窓際の席に座った。

なぜか背後から鋭い視線を感じる。