「ナナ、どうかしたか?」

顔を覗き込む声はとても優しい。

「う、ううん。今日って委員会だよね?」
「ああ、そうだね。そういや新しい用具配布があるな」

若干面倒くさそうに楠本くんが眉間に皺を寄せる。
納期が遅れていた新しい箒が各クラスに配布される予定になっていた。


「昼過ぎに到着だったよな」
「そうそう……あ、でも俺ら四時間目体育だ」
「今日は体育館か……用務員室には遠いな」

掃除用具は用務員室に届く手筈になっている。

高校の体育館は用務員室から随分離れていて、授業終了後すぐに向かっても配布予定時間にギリギリ間に合うかどうかといったところだ。


「悪いけどナナ、俺たちは遅れるかもしれないから手伝ってほしい」

雪華に言われてこくりと頷いた。補佐なのでもちろんそのつもりだ。


学校に到着し、正門を通り靴箱に向かう。特進科であるふたりは西棟のため、靴箱の場所も違う。

「じゃあね、ナナちゃん」

楠本くんが明るく手を振ってくれる。長身のふたりの姿が遠く離れていく。