「本当、過保護だな。お前、そんなにまめな性格だったっけ?」
「ナナにだけな」

その言葉にカッと頬が熱をもつ。

「……ま、毎日ありがとう」

綺麗な灰色の目を真っ直ぐ見つめてもう一度言うと、柔らかな微笑みを向けられた。


乗り合わせていた他校の女子生徒が赤面して、キャア、と小さな悲鳴を上げている。

雪華はあまり人前で表情を崩さないのでその気持ちはよくわかる。


このふたりが乗車している車両には女性の姿がほかの車両に比べて格段に多く、周囲からの注目も凄まじい。

毎朝一緒にいる私はどういう存在なのかと問いつめるような視線をひしひし感じている。

美人の親友はそんなものを歯牙にもかけずに堂々としている。


学校の最寄り駅に着き、降車する。

言わずもがなここでも周囲からの注目はすごい。
ふたりがこの時間帯の電車を利用するようになったのは最近にもかかわらず、待ち伏せている女子生徒は多く、その人気とネットワークに舌を巻く。

この注目を毎日普通に浴びて受け流しているこのふたりは本当にすごいと尊敬してしまう。


悪気はないとはいえここまで毎日見られたら、嫌な気持ちになる時だってあるよね……。


人前であまり無防備な表情を晒さないのも納得できる気がする。