翌日から私の生活は激変した。


廊下を歩くだけで周囲から物言いたげな目を向けられる。

付き合っているのかと何人にも尋ねられて『付き合っていないし、ただの美化委員会補佐です』とその都度弁解している。

それで引き下がってくれる場合はまだいいほうで、どうやって取り入ったんだとしつこく問いただされる時もある。その対応に既にぐったりしていた。


「本当に王子様の人気はすごいね」

千帆ちゃんが感心したように言う。あの後、教室に戻ってきた千帆ちゃんには梨乃が事の次第を説明してくれた。


三時間目が終わり、次は教室を移動しての選択必修科目のため、教科書を抱え友人たちと並んで歩く。


「他人事だと思ってるでしょ……」

思わず恨み言をこぼす。状況の変化についていけない。


「氷室くんは女子とは全然話さない孤高の王子様だったから皆、物珍しさもあるんだって」

千帆ちゃんがとりなすように言う。


「孤高の王子様って……そんな気難しい人じゃないと思う」

少なくとも昨日話した限りはそうは思えなかった。

「それ、そんな王子様の姿を知ってるのはナナちゃんくらいよ」

ねえ、と千帆ちゃんに同意を求められた梨乃は無言で頷く。