「え、えっと美化委員会の補佐をしてほしいって頼まれただけだから……」


嘘じゃない。とりあえず思いつく言い訳はこれしかない。


「なにそれ、羨ましすぎる!」

息巻くクラスメイトの姿に改めてふたりの人気を痛感する。


「ナナはまだお弁当が途中だし、皆待ってあげてよ。加奈は今日、日直でしょ? 美代、さっき三組の里香ちゃんが用事あるって来てたよ」

まるで敏腕秘書のような人あしらいで親友が見事にその場を収束してくれる。


「……助かった、ありがとう」
「どういたしまして。それにしてもなんでいきなり名前で呼ばれてるの? なんの話だったの?」


自席に戻り小声で屋上での出来事を一部始終話した。


「……ねえ、その質問って王子様の例の試験じゃない?」
「ま、まさか、私、告白してないよ!」

再び三色そぼろ弁当を手に取った私は親友の言葉に目を見開く。

「……でも補佐の話ならわざわざ屋上に行く必要ないでしょ? しかも恋人はおろか女子と接点すらもとうとしない氷室くんが、自ら接触してくるなんておかしくない?」

まるで自分に言い聞かせるように話す梨乃。


「ナナ、委員会より前に氷室くんと面識ないの? 忘れているだけで、中学が実は一緒だったとか……同じ習い事をしてたとか」
「ないない!」

ペットボトルのお茶を飲みながら即答する。あんなに目立つ容姿の人と関わっていたなら、いくらなんでも記憶に残るはずだ。