「氷室くん、副委員長なの? 寝てたのに? ……なおさら行きたくないし関わりたくないから来月は堤くんに出席してもらう」
「どうかしらね、相手は冬の王子様だよ? お伽話では王子様がお姫様を捜しにくるのが定石でしょ」
「私はお姫様じゃないし、変な冗談言わないで」
「半分本気。あれだけモテるのに今まで氷室くんには特定の恋人がいたためしがないの。このままでは済まないんじゃない?」


フフとどこか楽し気に口元を緩める親友を起き上がって睨み、全否定する。


「……面白がってるでしょ? ありえないから。もうこの話は終了!」
「なに盛り上がってるの?」


おはよう、と背後から声をかけられた。岬千帆(みさき ちほ)ちゃんはテニス部員だ。


「おはよ、千帆ちゃん。今日も朝練だったの?」

梨乃が穏やかに返答する。

「うん! もうすっかり夏みたいよね。すごく汗かいちゃった! 私、汗臭くない?」
「臭くないよ、大丈夫」
「ありがとう、ナナちゃん。それで、なにを盛り上がってたの?」
「冬の王子様の話をしていたの。ナナがあまりにも王子様を知らなさすぎて」

ちらりと私に視線を向けて言う。

「ナナちゃんは噂話とか興味なさそうだもんね。王子様っていえば、さっき体育倉庫の近くで女の子と話してるの見たよ。多分告白されてたんじゃないかな」
「ええっ!」

思わず大声を上げると、冷静に諫められた。