冬の王子様の想い人

目を見開いて固まる私の額に甘いキスが落とされる。そこに胸をよぎる小さな棘があった。


「……私がナツじゃなくても……そう思った?」


この期に及んでなにを言っているのかと思われるかもしれない。

でもどうしても聞かずにはいられなかった。それが決め手だったと言われてしまうのが恐い。


「もちろん、当たり前だろ。思い出のナツは、俺を変えてくれたかけがえのない人だと思う。でも最初に七海に説明しただろ? 再会したら、名前を知ってお礼を伝えたいって。ただそれだけなんだ。俺が好きになった、恋をした人とは関係ない。俺が恋したのは愛したのは七海ひとりだけだから」

はっきり言い切られて胸が震えた。言葉にならない温かな想いが心を占領する。

不安でいっぱいだった心のわだかまりがするするとほどけていく。もっと早く勇気を出して聞けばよかった。


「……もう今さら逃がさないよ? 七海は俺のたったひとりのお姫様なんだから。どこに行っても追いかける」


泣きたくなるくらい甘い独占欲を見せつけて私の唇を奪う。

その強引な感触が嬉しくて閉じた目から一筋の涙が零れた。


「返事は?」


キスの合間に尋ねられた言葉。

「うん……! 私もずっと雪華と生きていきたい」
「ずっと一緒だ。俺の気持ちは重いよ? 覚悟して」

クスッと唇が妖艶に弧を描く。冗談とも本気ともつかないそれは幸せで甘い約束。


閉じた瞼の裏で、どうか叶いますようにと小さく願いを込める。