「……久しぶり、だね?」


今まで一緒に過ごしてきたのになぜかくすぐったいような懐かしいような気持ちになる。

頭の中を記憶が駆け巡る。
あの日一緒に遊んだ大切な優しい思い出。


「……久しぶり、だな」

ふわりと相好を崩したその目が記憶の中のゆきくんと重なる。


「お母さん、すごいね……私、全然気がつかなかったのに」

改めて驚く。母の記憶力というか、洞察力はすごい。


「まあ、大人と子どもの記憶力の違いもあるとは思うけど……」
「……雪華、お母さんにほかになにか言われた?」
「え、いや、やっぱりイケメンね、みたいな感想は……」

言いにくそうに視線を逸らして言う。心なしか耳が赤くなっている。


そりゃあ、自分でイケメンって言うのはね……まあ、雪華は誰が見ても疑いようのないイケメンだけど……それにしてもお母さんってば。


コホンと小さく咳ばらいをして話を続ける。


「それだけじゃないんだ……俺のナツも見つかったから」


そう言って私の指をギュッと握り返す。
今、感じていた幸せで温かな気持ちが一気に萎む。

心を鷲掴みにされたようにドクンドクンドクンと鼓動がいやに大きな音を刻みだして胸の奥が冷たくなっていく。


葉山さんではない、本物のナツさん? 
見つかったって……それって……。


彼を信じてる、それでも答えを聞くのが恐い。ゴクリと喉が鳴る。


「ナツ、さん?」


無意識に呟いた声は弱々しく、指先の感覚がなくなっていく。

直視できず恐くて俯いてしまう。