「……わかった。もういい」

涙声で言って、葉山さんは下駄箱に向かって靴を履き替え、私たちの前を俯いたまますり抜けて、正門に向かって足早に歩いていく。


なにを口にすればいいのかわからない。


「……私が追いかけるわ。こういう時は女同士のほうがいいと思うから」

梨乃が私の肩をぽん、と叩いて言った。


「……悪い」

雪華が申し訳なさそうに言うと梨乃はゆっくりと首を振る。


「いいの。その代わりしっかりナナと話をして。楠本くんも一緒に来てちょうだい。なにかあったら男手が必要だし、幼馴染が心配でしょ?」

指名された楠本くんは肩を竦めて頷く。


「ナナ、後で連絡するわ」

そう言い残して、ふたりは連れ立って葉山さんを追った。


「……ごめん、七海。こんな風に話すつもりじゃなかったんだ。明日ゆっくり会ってから話をしようと思っていたんだけど」

小さくなっていくふたりの姿を見つめる私に声をかける。

「……なにか、あったの? 今日の授業は午後からだったよね? 登校するの早くない?」


葉山さんの様子から改めて告白されたのではないかと思った。

食堂であった彼女は自信に満ち溢れていて、今日のような雰囲気は微塵も感じられなかった。


一体ふたりの間になにがあったのだろう。