紙を捲る微かな物音にふと目が覚めた。キョロキョロと周囲を見回すが傍には誰もいない。


ここは……あれ、私どうしてたんだっけ?


見慣れないペパーミントグリーンのカーテンと白いベッドと天井に違和感を感じる。


ああ、そうか。ここは保健室だ。


そっと身体を起こすと物音に気づいたのか、ゆっくりとカーテンが開けられた。

「あら、起きた? 気分はどう? もう少しで五時間目が終わるからそろそろ起こそうかなと思っていたの」
「ありがとうございます。随分スッキリしました」
「そうみたいね。顔色が少し良くなったわ。お友達と帰れそうかしら? どなたか保護者の方に連絡して迎えに来ていただく?」

枕元近くに立つ千田先生の問いかけに首を横に振る。


「大丈夫です。友達と帰ります」
「そう? くれぐれも無理をしないように、身体を休めてね。それと自宅に着いたらその旨を担任の先生に連絡してね。氷室くんにはその後で電話してあげて」

最後は茶目っ気たっぷりに言われてしまい、焦ってしまう。


「は、はい。あの、先生、雪華は……教室にいつ頃戻ったんですか?」

長い間引き留めてしまったのかと心配になって尋ねる。

「それがね、つい十分くらい前なの。大丈夫だから戻りなさいって何回言ってもしつこくて。あなたが心配で仕方ないのね。寝付いたあなたの手をずっと握っていたわ」

教えられた事実に胸の中がじんわりと温かくなる。