「ねえ、聞いたわよ。朝の修羅場!」

朝練を終えて、教室に帰ってきた千帆ちゃんに言われた。


修羅場って……どんな噂をされてるの? 
確かさっき雪華にも勝手に譲るなって怒られたけど……。


「すごい表現ね。まあわかる気もするけど」
「転入生は王子様狙いなんだね。負けちゃだめよ、ナナちゃん」

そういえば千帆ちゃんに雪華と恋人になった報告をきちんとしていない。葉山さんの一件があってすっかり忘れていた。


「あ、あの千帆ちゃん……実はその、私、雪華と付き合っているの」

改めて口にするととても恥ずかしくて、カッと耳が熱くなる。

「うん、知ってるけど? どうしたの、改まって」

不思議そうな表情で言われる。


知ってるって……えっ?


「な、なんで!?」

思わず素っ頓狂な声が出てしまう。

「なんでって……ナナちゃんが王子様の恋人だなんてもう周知の事実だし」


ちょっと待って、皆、ずっと私が恋人だって本気で思ってたの? 
きちんと恋人になったのって昨日なんだけど!


「アハハ、千帆ちゃん、皆の噂に便乗したでしょ?」
「わかっちゃった? ごめんごめん、一度言ってみたかったの。」

悪戯がばれた子どものように屈託なく白い歯を見せる。