「……ゆきちゃんに会ったら俺よりゆきちゃんを選ぶつもりだった?」

頭を少しだけ上げて、至近距離から覗き込まれる。

その近い距離と感情の読めない声に怯みそうになったが、その目に滲む胸が痛くなるほどの切なさに気づく。


どうしてそんな目で見るの? 
あなた以上に好きな人なんてどこにもいないのに。


溢れ出した想いは今にも決壊しそうだ。


「そんなわけない! 雪華より大事な男の子なんていないよ!」


こんなに胸が震えるほど好きな人は雪華しかいない。

こんなにも心を揺さぶって狂わせる人は雪華しかいない。

こんなにも誰かを好きになったことはない。


今日まで口にできずに堪えていた気持ちがどんどん膨らんでいく。

間髪いれずに否定すると、雪花の身体から少しだけ怒りの空気が薄まるのを感じた。


「……好きなの……雪華だけがずっと好きなんだよ」


どうしたら、なにを言えばこの気持ちはあなたに伝わるの?


なにをしたら、あなたに好きになってもらえるの?


胸がちぎれそうに痛い。想いが大きすぎて、重たくて苦しい。


膨らんだ想いは制御できなくて心から溢れかえる。


好き、大好き。


いつから、なんて答えられない。


理由なんてわからない。


ただ、好きなだけ。


サラサラの黒髪も、名前を呼んでくれる心地よい低い声も、細身なのに私とは違うガッシリした腕も、触れる優しい長い指も全部が好きで泣きたくなる。

我儘なところも心配性なところも、本当は誰よりも心が温かいところも、この人を形づくる全てがこんなにも愛しい。