白井君の慰め方


初めてホームで話した時から今日この時まで、白井君は私を何度も慰めてくれた。悲しくて辛い時に傍にいてくれる存在、それが私にとっての彼だった。白井君は、私に新しい気持ちをくれた人。私の考え方を変えてくれた人。想わせて貰えるだけでいいのだと、私に諦めさせてくれた人。私の自己中心的な恋愛の犠牲になんてしたくない、私にとって誰よりも特別な、大事な人。どうとも思われてなくても、失恋しても傍に居たい、居続けてしまっている人…だった。

「私、ちゃんと弁えてるから大丈夫だよ。やめる時はちゃんとやめるよ、白井君のファンごっこも」
「…つまり今まで相原さんと居たのは、優しい俺が失恋の傷を慰めようと気遣ってたからって事?」
「…それ以外に何かある?」

どことなく険悪な雰囲気が漂ってきた。もしかして、もうダメなのかもしれない。まさか今日が、今が、その時なのかもしれない。

「じゃあ、もう終わりにしよう」

その言葉は、白井君から告げられた。こんなにあっさり、こんな事で終わりが来てしまうのかと、茫然と、思った。

「相原さんにとってはそうでも、俺にとってはそうじゃなかった。俺はそれでもいいと思ってたつもりだったんだけど、やっぱりそうじゃないって分かった。だからここで一度終わらせたい。こんなのはもう無駄だ」
「……」

呆然とした後に、ハッキリとのしかかってきた現実が大き過ぎて俯いた。重くて重くて、顔が上げられない。

「相原さんは、勘違いしてる」

俯いた私に、白井君は続ける。

「俺は別に優しくない。優しいと思われたい訳でもないし、慰めるのだって苦手だからしたくない。なのになんでするかって言ったらさ、それは相手が相原さんだからだ」
「…無理させて、ごめんなさい…」

したくない事を無理矢理させてしまう程、私は彼に想いを押し付けてしまっていたのか…最悪だ、大切にしたいはずだったのに、いつも私の恋はこういう結末を迎えてしまうんだ。私は私の為に人を傷つける恋愛しか出来ない。やっぱり諦める他無かった、それが一番白井君の為だった。