白井君の慰め方


ハッとして違うのだと伝えようと白井君を見た。すると彼は目を大きく見開いて私を見ていて、バチッと強く視線がぶつかった。

「…やめて、三嶋のファンになるの?」
「なっ、ならないよ!」

白井君からのまさかの言葉にビックリしすぎて、一回り大きな声が出てしまった。予想外も予想外。なんでそうなったのかがさっぱり分からない。有り得ないと焦る私を見て、白井君は気まずそうに視線を下ろす。

「じゃあ相原さんは、なんでやめるの?」
「それは、白井君の迷惑になるから…いや、やめるつもりは無かったんだけど、ついこう口をついたというか…」
「思ってる事が?」
「…した方がいいのかなって事が…。やっぱり迷惑になるならやめる…かな…」
「俺は迷惑じゃないっていつも言ってるんだけど」
「…うん。でも、白井君は優しいから気を遣ってくれてる所もあるでしょう?」

そして、「いつもごめんね」と、また謝罪を口にした時だった。

「あのさ、聞きたいんだけど」

強い声色で、口調で、はっきりとした輪郭を持った白井君の言葉が耳に届く。

「俺がなんで相原さんに気を遣わなきゃなんないの?」

強い視線が、私を射抜く。私はその言葉の衝撃に息を飲んだ。それは『相原さんにどう思われようと自分には関係無い』と言い切られたあの時を彷彿とされるものだった。

「相原さんは俺の話、ちゃんと聞いてる?」
「…うん」
「俺の気持ち考えた事ある?」
「…うん…でも、分かんないから…」
「分かんない?」
「…分かんないよ。だから、優しいから許してくれるんだって、思ってる…」
「うん。俺は相原さんに優しいから何でも許したいと思う」
「それがさ、気を遣ってくれてるって事でしょう?なんでそうしてくれるかって言ったらあの時、私が慰めてくれる?なんて言ったから、だから優しい白井君は刷り込まれちゃったんだよ。恋してる私が好きって言ってくれたのも、私が楽しいなら良いっていってくれたのも、結局そういう事なんだよね?だって白井君にとって私はなんの影響力も無い訳だし」

そう、これらは全て、

「優しい白井君による私の慰め方だって、私は思ってる」