白井君の慰め方


長々と話してしまった訳だけど、多分流れは説明出来た…と、思う。そして引かれた訳では無い事も知れた。頷いてくれたし、多分納得して貰えたんだと思うんだけど…また白井君は俯いてだんまりだ。どうしよう…さっきからずっとどうしようばっかりだ…

「…とりあえず、遅くなっちゃうしもう帰る?」
「…うん」

そしてとぼとぼと隣同士で歩く私と白井君は、引き続いて気まずい空気の中にいる。

黙ってる白井君は引いてないって言ってたけど、もしかしたら怒ってる事はあり得るのかも…なんて思考に到達して、大正解じゃない?と、血の気が引いた。だって、じゃなきゃこんなに何も話してくれないなんておかしい。何か白井君に失礼な事を言ってしまったのだろうか。話した内容を思い返しても良く説明出来ていた自信はこれっぽっちも無いけれど、特別怒らせる様な事を言ってしまった箇所も無い、と思うんだけど…いや、そんな事はないのだろう。だっておかしいもん。

こういう時にコミュニケーションがきちんと取れるか取れないかで、関係の良し悪しが決まるんだと思う。これではまるであの頃の先輩との二人きりの時間のようだ。何か話さなければと思うけど何も思い付かなくて、だからと言って空気を変える行動を起こす事も出来なくて、黙ってこの時間が終わりを迎えるのを待つだけ…次に移るのを相手が動いてくれるまでただ口を閉ざして待つだけ。

白井君の機嫌が治るのを黙って待っているだけの私は、白井君にとって何の価値がある?

「ご、ごめんね白井君。私なんか言っちゃったかな。分かんなくてごめん…」
「え?いや」
「ごめんね、私が付き纏うから付き合ってくれてるのに…嫌な気持ちにさせたよね。ごめんね。もうこういうのやめます…」

先輩にはついに謝る事が出来なかったけれど、まだ白井君には謝る事ができる。それだけはもう失敗したくないと、だんまりを決め込んでいた自分の口をこじ開けた。するとあっさり謝罪の言葉は出てきて、ついでに今後の身の振り方までするりと飛び出してビックリした。え、私、やめるの?何を?付き纏うのを?