「行こ行こ〜」と、ゾロゾロ帰っていく三嶋君と部員の方々の中、ポツンとその場に取り残されたのは私に呼ばれた白井君だった。彼は直立不動のまま目をまん丸にして私を見詰めていて、どうしたんだろうと首を捻る直前、私はハッとする。
ま、まさか、もしかして白井君、引いてる…?
そういえば結構キツイ事を言ってしまった気がするんだけど…もしかしてこんな人だと思わなかった的な、私にドン引きの真っ只中…?
「いやそのっ、白井君!これはあの人が最近絡んでくるから、それでこうつい攻撃的になったというか、ほらあの人遠慮が無いから!」
「…うん」
「だって、だってね?今日だっていつまでも居るから結局委員会の仕事が全然出来なくてね、先生に怒られたし明日もやる事になったんだよ、信じられないよ。そうだ、明日手伝うように言えば良かった。私のせいだけじゃないのにあっちは自由なんてズルい」
「…うん」
「これでまた貴重な昼休みがパアだよ…昼休み…白井君は今日、昼休みに何してた?」
「…友達とゲームかな」
「…友達とゲームかぁ…」
貴重な昼休みの日課である白井君を探して観察する時間が無くなってしまった為、今ここで今日の分を取り戻そうとした。思った通り。やっぱりゲームしてた、私の読みは正しかったんだ…!なんて心が満たされた余韻に感じ入っているうちに、会話は終了していた。という事は、次の話題を考えなければならない。まぁ簡単だ。白井君に聞きたい事なんて山程あるし、白井君と話せるのは幸せな事なので。
「あーえっと、白井君は……」
が、しかし。なんだか漂う空気が重い事に気がついた。そして同時に思い出される、もしや引かれてる?の疑惑問題。そうだった、白井君に引かれたかもしれないんだった、どうしよう…と、白井君に目をやるも、俯き加減な彼の表情は、彼の重い前髪に邪魔されてこちらからではさっぱり窺えない。どうしよう…



