暇潰しで締め括られた三嶋君とのやり取りで、あのどうしようもないドキドキはなんとなく落ち着いた。
それはまぁ、どれだけ迷惑だったとしても有難かった。落ち着けたおかげで今日もまた、いつも通りに白井君の帰りを待ち伏せする事が出来る。
校門の前に立って待っていると、いつものように声が聞こえてきた。白井君の声…では無く、これは三嶋君の声だ。あの人は声が大きいから、聞き慣れたらすぐに分かるようになってきた。これは三嶋君に絡まれる事になりそうだ。最近の傾向だと絶対そう。今日こそはそうならないようにしようと思う。うん。勇気を出して、今日は私から!
「し、白井君!」
決意を胸に彼の目の前に飛び出した。やたらと力が入った両手は握り拳で、踏み締めた両足は正に仁王立ちとしか良いようの無い様に…
「何?決闘の申し込み?」
を、すかさず突っ込む三嶋君のせいでゲラゲラと男子達の笑い声に包まれてしまった。もうやだ、穴があったら入りたい。
「わ、笑わないで!真剣なのに」
「決闘が…?」
「違うに決まってる!」
本当にムカつく。応援するとか言っておいて、結局三嶋君はただバカにして楽しみたいだけなのだ。
「暇潰しの人は早く帰って下さい。他の方々も気にせずどうぞ」
「えー?もしかして昼休みに言った事怒ってんの?」
「怒ってない。怒ってる訳じゃないけど、ただただ納得はした」
「納得しちゃったか」
「君という人間が掴めた気がして気持ちが楽になったよ、ありがとう。もう遠慮無く言わせて貰うけど邪魔なので帰って下さい」
「おーこわ。これは退散が吉だわ」



