そう。どんな立場でも一番大事なのは、白井君が幸せである事。もともとその為に許された私の恋心なのだから、その時は潔く諦めるのが当然である。出来るかどうかは分からないけれど。

「白井君が幸せなら、こんな私なんてどうだっていいんです」
「えーそれ健気過ぎない?もっと欲望に忠実でいいと思うけども」
「充分忠実になって考えた結果です」
「…なんか愛が重過ぎて、気持ち悪い通り越して可愛くなってしまったわ」
「は?」

あまりの意味分からなさに三嶋君へ視線を送ると、三嶋君も「は?」という表情で私を見つめてきた。どういう事だ、意味がわからない。意図がわからない。

すると三嶋君がはっと我に帰ったようで、「あー」と、気まずそうに頭をかいて顔を逸らす。次にパッと私へと戻した彼の顔は、一つ前の会話を忘れたかのようなピカピカの笑顔だった。まるで良い事でも思いついた時のような。

「白井のどこが好きなの?俺応援する!」
「…いえ、結構です」
「じゃあ次は俺のファンになれば良いと思う」
「どういう話の流れでそうなるの…」
「いやね?実はもともと今日はそのつもりできたんだけど、あまりにも相原さんがブレないから心折れて応援する事に致しました」
「いやなにそれ…」

もう彼の思考回路は理解不能である。やっぱりまた何か企みがあったから声を掛けてきていたのだ。冷た過ぎる対応で丁度良かった、大正解!それにしても本当に迷惑な話。

「応援とか本当に要らないし、そもそも君のファンになるって何?何がしたいの?なんでこんなに関わってくるの?昨日といい今日といいなんで?」

もう気遣い不要と分かったからこそ聞いてやった。困れ。そして焦って答えてみろ。答えの粗探しして突きつけてここで終わりにしてやる。もう金輪際関わって来れないように言葉で制してやる。そんな強気で出た私の問いかけへの返答は、

「んー?まぁ、暇だから?暇つぶし?」

…だった。うん、なるほどね。それならもう何も言えないし、全てにおいて納得だわ。