どうしよう…ダメだ。辛い。苦しい。嬉しいのに、悲しい。いや、切ない。なんで私はこんなにもこの人の事が好きなんだろうと、彼に慰められる度に思う。きっとこれから先もずっとそうなんだと思う。

「わ、私…ファンだから」
「うん」
「ただのファンにそんな事したらいけないよ、つけ上がるよ」
「うん」
「帰りだって待ってたら迷惑だって言わなきゃダメだよ。毎日待たれるよ」
「うん」
「毎日ああやって絡まれて、変な噂とか流されるかもよ?」
「うん」
「うんってさ…ちゃんと聞いて、」

顔を上げて、ハッとした。恥ずかしくて俯いていたから分からなかった彼の表情が、目の前のとても近い距離で現れたから。適当に返事をしているものだと思ったから、文句の一つでも言ってやろうと思った所だったのに。

「うん。ちゃんと聴いてるし、全部分かってる」

柔らかな声色。小さく上がった口角。前髪の隙間から覗いた、慈愛のこもった優しい瞳。

「毎日会えたら嬉しいから、それでいい」

ーーこの人はこんな風にも笑うんだ。何を言われているのかとか、そんな事はもう考えられなかった。

愛おしい。この気持ちは、私のもの?それとも今目の前の彼のもの?

満たされて許されるこの感覚はきっと、他の誰からも与えられないものだ。私はずっと、これが手放せない。きっとそう。気持ちを隠して、正当にみえる理由を作って、みっともなくずっと縋り付いていくのだろう。

それでもいいと思ってしまう私はもう末期だ。