一同唖然。手を掴まれた私は勿論、皆が目を丸くして白井君を見た。なんて事無い顔をしているようにも見えるし、すごく機嫌が悪そうにも見える。それにあの白井君がと思うと余計になんて声を掛けたらいいのかわからなくて、皆で戸惑っている中にやっぱりというか当然というか、口を開いたのはこの空気を作った張本人で。

「えー、俺も相原さんと帰りたいのになんで白井に口出しされなきゃなんないの?つーか相原さんっておまえの何?」

…それを彼、三嶋君は言った。その問いを口にしてしまった。

「…友達だけど」

そう白井君が答えると、

「ならその権利なくね?ただの友達なら俺だって友達な訳だしな」

良くあるお手本のような答えを三嶋君が返して、それに白井君の眉間がグッと寄る。もうかもしれないでは無く確実に苛立ってるのが分かる状況で、私はいてもたってもいられなくなった。

「わっ、私が白井君のファンだから、白井君が私に気遣ってくれたってだけだよ」

そういう事ーー私達の関係の事は、彼に求めないで欲しい。私と彼をそういうものに当て嵌めて彼を困らせるのはやめて欲しい。彼にそのつもりは無いのだから。全ては私の我儘によるもので、彼は私に一切そういう気持ちを抱いていない。だからそういう事で白井君を責めるのはやめて欲しい。白井君の優しさは何も間違ってはいない。

「現に私が困ってたのは分かるよね?分かってたよね?皆さん。だから気付いた白井君がそうしたっていう…ただ、それだけの事です」

「私がこんな事したせいでごめんなさい。もう帰ります」そう言い捨てて、私は走り出した。白井君の手を振り解いて、とにかく誰も居ないところまで、もう何もかも全てを振り切るように、走り去った。