「俺は、楽しそうな相原さんを見るのが好きだし、そんな相原さんに憧れてる。だからもし俺がやめればいいなんて言ったせいで休む事にしたなら、それは考え直して欲しい。また悩む事があったらその時は俺に頼ればいいよ。だから相原さんは恋愛を諦めないで欲しい」
「……」
「俺に、また相原さんを慰めさせてよ」

ーーその瞬間、少しもブレない芯の通った声が、重く濃い色をした感情の込められた瞳が、私の心を貫いた。

…これは負けた。

負けだ負け、もう完全に負けだ!

「白井君は、恋してる私が好きなんだ」
「うん」

弱っちい私の決意やら覚悟やらが全て水の泡となる結末だったけれど、もう仕方ない。だって好きな人の頼みなら仕方ないじゃないか。憧れてるなんて言われて、慰めさせてなんて言われたら仕方ないじゃないか。

「…また頑張ってみる」

そう答えた時、白井君は嬉しそうに微笑んだ。小さなものだったけれど、ふわっと浮かぶ綿毛のような可愛らしい笑顔で、彼のそんな表情を見たのは初めてだった。普段から硬い表情が多い白井君だ。それが見れただけでコロコロ変わる自分の決意もまぁいいかと思えた。例え恋愛対象として捉えて貰えてない事の証明だったとしても、もういい。

「これで一緒に白井君の世界もキラキラするといいね」

白井君が笑顔になれるなら、失恋確定で不毛な恋でも、自己満足的な成就させてはいけない恋でも、もう少し続けてみようと思う。白井君が喜んでくれるなら。