「まぁそれもそうだよね。先輩と白井じゃタイプが違いすぎるし、今まで好きになってきた人もみんな先輩タイプだったじゃん?今更白井がどうとか言い出す方が可笑しい」
「それはまぁ…そう。先輩みたいな目立つしモテる人が好みだった」
「だったって何、だったって。今ではそんな憧れの先輩と付き合ってるくせに…え、まさか別れたの?」

「振られたの?それで急に白井だなんだって血迷った事言ってるの?」なんて、目を丸くした彼女がやたら失礼な事を身を乗り出して聞いてくる。これで全てが繋がったと言わんばかりの勢いで、ほぼほぼ確信している。女の勘って本当に鋭い。

「いや、振られた訳ではないんだけど…」

むしろ付き合ってるのかもよく分からなくて。

「…ちょっと荒んだ心が白井君に癒されただけ」
「あーなるほど」

すぐに納得した彼女はポンポンと私の肩を叩いた。

「仕方ないって、だって先輩だよ?付き合えただけありがたいって」

良い思い出出来たじゃん?のノリで慰められ、励まされた。なるほど…そうか、なるほど。

「始めから私の手に負えない相手だったのか」
「それね。そりゃあ飼い犬に慰められたくもなるよ」

納得しかなった。ごちゃごちゃ悩む事すらおこがましい。恋人のごっこが出来ただけで満足するべきだったのだ。それなのに対等である事を求めて勝手に傷付いてそれを白井君に慰めさせて、一人で満足していた。踏み込む勇気もない、ストーカー気質で根暗な私らしい答えだった。暗くて圧倒的に陰気で嫌な奴だ。