「ふふっ、ありがとう」

その不器用さがとてもくすぐったかった。苦手なのに頑張ってくれているのが目に見えてわかるやり方が、とても愛おしかった。

「こんなの初めて。白井君はやっぱり特別に素敵だね」
「やめてよ、そんな事ないから」

ぷいっと顔を背けたまま、「じゃあ戻るから」と、足早に白井君は保健室を出て行ってしまった。照れているのもバレバレだ。なんて可愛い人なんだろう。

ーー正反対だ

言葉が自然と頭に浮かんで驚いた。誰と何を比べて浮かんだ言葉なのかなんてすぐに分かった。私は自然と彼を比べていたのだ。先輩と比べて、想いを量っていた。私は先輩と白井君を天秤に掛けた…?

それはもう本当に、信じられない罪悪感だった。そんな事をした私はバチが当たったかのように、それからずっと先輩を思い浮かべる度に白井君が頭を過ぎるようなってしまい、先輩に対して浮かれていたあの気持ちが思い出せなくなっていった。

先輩が好きだったあの気持ちと、白井君を目で追うこの気持ちは別のものだ。別のものだけど、どちらが本物なのか、私にはよく分からない。ただ私の中で白井君の存在が日々大きくなっていく事だけは、紛れも無い事実だった。