え?と、彼の言葉に口を閉じる。白井君は私の様子に気付いているのかいないのか、何事も無いように話を続ける。

「結局あの時だって上手く出来なかったし、そういうの得意じゃないから声掛けようにも掛けられなかったんだ。でも元気になったみたいで良かった」

…それはきっと。今、白井君が言っているのはきっと、先輩との事をどうするか悩んでいた私の事と、今の悩む事をやめた私の事だ。

「解決して良かったね」

そして彼はダンボールの底を抱えると立ち上がり、「じゃあ戻るから」と、私に挨拶をする。『解決して良かったね』…慰めてくれた彼に言われた今、私が真っ先に囚われたのは、罪悪感。

私はあれから何かを変えられたのだろうか。何かを変えて、向き合って、努力して、問題を解決させられたのだろうか。…いや、何も変えられていない。私は浮かれて問題を後回しにして見ないようにしただけで、実際には何も変わっていない。目を逸らしただけで、解決なんてしていないのだ。私ってどうしてこうダメな奴なんだろう。

「…うん。またね」

ここで部活頑張ってねとか、気の利いた事は言えないのか。時間だけ使わせておいて、結局勝手に落ち込んで私は…そうだ、お礼も言えてない。付いてきて長々話に付き合ってもらって、それなのに今回はお礼も言えないで、

「あー、ごめん相原さん」
「あ、え?な、なに?」

そのまま去っていくと思った白井君が振り返り、どこか居心地悪そうに、気まずそうに話し出す。

「なんか落ち込んでる…よね?俺何か余計な事言っちゃったのかなって…ごめん、本当そういうの鈍くて」
「違う違う!白井君のせいじゃなくて、むしろ謝るのはこっちの方だし…ほら、もう戻らないと。ごめんね遅くなっちゃって」

そして、「ありがとう」と、最後にちゃんと言う事が出来た。良かった。白井君が話掛けてくれたお陰でやり残さずに済んだ。あとは先輩の事、ちゃんと考えないと…

「……」
「……」
「……白井君?」