それからは何となく気まずい感じになってしまうかな、とも思ったけれど、私の不安に反してそんな事は無く、いつも通りの白井君といつも通りに帰宅し、またいつも通りの朝が来た。

拍子抜けした。良い方でだったから良かったけれど、もう逃げ出したい気持ち一杯になって、今日は部活終わりに待つのやめようかなとも思った。でもここで逃げたらまた前のままだと、ギリギリで踏ん張ったのだ。私の心では無くて、本物の白井君と向き合わないと、と。

気合いを入れて臨んで、結果、いつも通り。
いつもの微笑みながら私の話に相槌を打ってくれる優しい白井君だった。なんだ、私の考え過ぎか。そんな事もあるんだなぁと、また一つ勉強になった。白井君は安定していて隣にいてホッとする。私の白井君に対してどうすればいいのかずっと顔色を窺っている、という事が減ってきたように思う。

そんな白井君が好きですと、今日も私は思うのだ。
一番穏やかで、一番優しい。一番カッコいい。そんな白井君の彼女になれて幸せだと私は学校内のあらゆる皆様にお伝えしてきた訳ですが、何故かこの廊下での騒ぎ以降、「あ、白井の彼氏」と、呼ばれるようになった。なんで??

「白井の彼氏はっけーん」
「……」

ついにこの人にも言われるようになったか。ダル絡みの気配を察知して聞こえない振りで通したけれど、この人、三嶋君には通じない。

「なー、無視は無いでしょ。俺悲しー」

昼休み、バッタリ廊下で会ってしまった。一人でトイレに行ったばっかりに。友人と連んでトイレに行くべきだった。この人の声はデカいから目立つのが嫌なのだ。

「…彼氏じゃないし」

無視するような人だと周りの人に思われたくなくて、返事をした。そうだよ、そもそも彼氏じゃないし。彼女だし。