そして少女は兵器を討つ

かつて真っ白いケースの中で、私は『死』を知覚した。

これが恐怖。これが拒絶。これが死。

あの時あの場で私を一度は飲み込んだ『死』――

『それ』が――

目の前の、『彼女』だった。

「ああ゛あ゛ぁぁあぁ!!」

来るな来るな来るな!

呪文を心の中で繰り返しながら、右手を突き出す。

私の体を一息で多い尽くすほどの肉塊を、一瞬だけ受け止める。

そう、一瞬だけ。

私の力は思いのほか強い。けれどその力を大きく超越して、ヤツの腕は私を押しきった。

ブーツが、床から離れる。フリルスカートが風にたなびく。

ドゴウッ!

「ぐきゃぅ!?」

私は、壁に叩きつけられていた。

全身を駆け抜ける鈍痛。視界に一瞬の闇が差し、膝から力が抜ける。

それでも、倒れることはできない。

ヤツの掌が、私を壁に押さえているから。

よく見れば、ヤツの人差し指は男の下半身で、中指はねじくれた女の体で、親指は背骨の折れた男だった。

その男の顔に――見覚えが。

細い顎で、ニヒルに笑んでいる……いつか一度だけ出逢った、白衣の男……。

ただ思う。

(きもち、わるい)