紅羽はいつも、教室でお弁当を食べる。

そこそこ仲がいい女子たちで、固まって他愛なくお喋りをしながら。

梅雨が明けるか明けないか、期末テストも間近な頃である。

いつものように友人のほうに行こうとしたら、出入り口近くの席の子に呼び止められた。

「烏丸さん、呼んでるよ」

はて?

と見ると、そこにいたのは先日の、ゆるい二つ縛りの一年生である。

紅羽は思わず、自分を指さして首を傾げる。

太陽ではなく……?

とはいえ太陽は今は、教室にはいないのだが。

一年生……確か向日葵とか言ったか、彼女は、怖々と教室を覗いていた。

上級生に怯える、愛らしい女の子である。

向日葵は紅羽に気づくと、なにか決意の眼差しになって、こくりと頷いた。