* * *

 そのまま迂回して、赤い色で塗られた門の前までやってきた。門はくすんだ赤い色で、柱には鳥の彫刻がほどこされていた。
 閉じられた門と塀の先には屋敷の屋根も見えなかったけど、庭木の赤い葉が覗いていた。
 
「雪村様、お願い致します」
「ふえ? えっなに?」

 風間さんが自分の背中を揺らして雪村くんを起こした。

「お願いします。雪村様」

 風間さんは少し強く言って、雪村くんを下ろす。

「え……え~と、なに?」
「結界です」
「ああ、はいはい。結界か!」

 雪村くんってちょっとにぶいのかな?
 不意に、私の隣でイラついた気配を感じた。ちらりと横目で見ると、クロちゃんが軽く舌打ちをしていた。
 私は苦笑しながら前に向き直る。
 クロちゃんって、見た目と違って短気っぽそう。まあ、フード被っててあんまり顔も良くわかんないけど。

 雪村くんはレザージャケットについていた前ポケットから札を取り出した。その紙には文字が書いてあって、まるで呪符みたい。
 その紙を人差し指と中指の間に挟んだ。