* * *
結局私は、走らないという条件つきの花野井さんにおんぶされて森を出た。
お礼を言うと、花野井さんはにかっと笑って、俺も悪かったなぁと私の頭をまたぐしゃぐしゃと撫でた。
本当、明るくて太陽みたいに笑う人だなぁ。アニキって呼び方がやっぱり一番しっくりしそう。
私は歩き始めた花野井さんの大きな背中を見つめた。
(よし! やっぱり勝手にアニキって呼ぼう! 心の中だけだけど!)
* * *
森を抜けて坂道を上って行くと青色の門があった。私が通った門だ。私はてっきりその門を通って屋敷に戻るんだと思ったのに、彼らは迂回しようとした。
「あの、入らないんですか?」
私が門を指差して聞くと、風間さんが後ろから答えてくれた。
「青龍の門は結界が一部破られてしまったので、先程雪村様が簡易の結界を張りました。簡易のものは通り抜けが出来ないため、そこから入るには簡易結界を破らなければならないのです」
「結界、ですか」
この世界にはそんなものもあるんだ。でも、まだ異世界だなんて実感が湧かない。結界の話を聞いても、ちょっと疑っちゃう自分もいる。
「それにしても、やはり貴女には屋敷が見えるのですね」
「え?」
私は塀の中に視線を移す。庭の木の葉がちらほら覗き、奥にある屋敷の瓦が僅かに見えた。普通に、見えるけどな。
「この青龍の門の結界を破ったのも谷中様なんですよ」
「……私、ですか?」
そんな覚えないけど……。
怪訝に風間さんを仰ぎ見たけど、風間さんは微笑んだだけで、何も答えてくれなかった。
結局私は、走らないという条件つきの花野井さんにおんぶされて森を出た。
お礼を言うと、花野井さんはにかっと笑って、俺も悪かったなぁと私の頭をまたぐしゃぐしゃと撫でた。
本当、明るくて太陽みたいに笑う人だなぁ。アニキって呼び方がやっぱり一番しっくりしそう。
私は歩き始めた花野井さんの大きな背中を見つめた。
(よし! やっぱり勝手にアニキって呼ぼう! 心の中だけだけど!)
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森を抜けて坂道を上って行くと青色の門があった。私が通った門だ。私はてっきりその門を通って屋敷に戻るんだと思ったのに、彼らは迂回しようとした。
「あの、入らないんですか?」
私が門を指差して聞くと、風間さんが後ろから答えてくれた。
「青龍の門は結界が一部破られてしまったので、先程雪村様が簡易の結界を張りました。簡易のものは通り抜けが出来ないため、そこから入るには簡易結界を破らなければならないのです」
「結界、ですか」
この世界にはそんなものもあるんだ。でも、まだ異世界だなんて実感が湧かない。結界の話を聞いても、ちょっと疑っちゃう自分もいる。
「それにしても、やはり貴女には屋敷が見えるのですね」
「え?」
私は塀の中に視線を移す。庭の木の葉がちらほら覗き、奥にある屋敷の瓦が僅かに見えた。普通に、見えるけどな。
「この青龍の門の結界を破ったのも谷中様なんですよ」
「……私、ですか?」
そんな覚えないけど……。
怪訝に風間さんを仰ぎ見たけど、風間さんは微笑んだだけで、何も答えてくれなかった。



