「ドラゴン?」

 そう、あれは、まぎれもなくドラゴンだ。ゲームとか、映画で見るみたいな……。違うのは、派手な表皮だけ。

「うそでしょ……そんなことあるはずない」

 一瞬立ち止まった足を、我に帰って動かし始める。だけど、足が震えて思うように走れない。小石に躓いて、つんのめる。転んじゃダメだ! 必死に踏ん張って、体勢を整えるけど、やっぱり足が思うように動かない。

「誰か、誰か、助けて!」
「ギャアアア――!」

 私が叫んだ瞬間、背後から不気味な悲鳴が響いた。
 思わず振り返る。その瞬間、私を追いかけていたドラゴンの首と胴体が、真っ二つになって地面へ落ちたのが見えた。

「え、え?」

 数メートル、多分、五メートルくらい先に巨体が横たわる。首の切り口から大量に血が流れていた。

「うっ」

 吐き気がやってきて、私は顔を背けた。

「無事か?」

 人の声がして、勢い良く顔を上げると、ドラゴンの影から毛利さんが出てきた。血の着いた日本刀を懐から取り出した布で拭く。

(もう、何がなんだかわかんない)

 けど、私はほっとして、助かったことと、人に会えたのが心底嬉しくて、その場にへたりこんでしまった。

「うっう……」

 涙が頬を伝う。

「う、ぐすっ、ひっく」
(ああ、恥ずかしい。けど、止まんないよぉ)