(え? 鳥? なんだ、結局鳥かぁ。じゃあ、逃げなくても――)

 速度を緩めようとした瞬間、羽音にまざって重いものが落ちる音がした。

――バサ! ドスン! バサ! ドスン! ガガッ!

 地面を強く蹴るような音も響いてくる。

(なんなのぉ!?)

 私はさらにスピードを上げ、反射的に振り返った。
 
「……は?」

 自分がアホみたいに、あんぐりと口を開けたのがわかった。脳が、一瞬停止したのを感じる。

「いや、ちょっと、待ってよ」

 思わず呟いていた。
 オレンジ色の爬虫類のような表皮、蝙蝠のような羽、鋭い牙に、二メートル近くある大きな体。その巨体を羽ばたかせながら、地面を蹴っている。
 それは、いるはずのない生物だった。