『電波の届かないところにおられるか、電源が入っていないためかかりません』
「え!? うそでしょ? 警察だよ!?」
私は慌ててモバイルデータの確認をした。モバイルデータはたしかにONになってる。
「ってことは、もしかして圏外?」
私は思わず膝をついた。
(うそでしょお!? 最低、最悪っ!)
「グギャア! グギャア!」
また変な鳴き声がして、びくっと身を竦めた。立ち上がって不気味な森を見回す。
なんだろう。気のせいかな、鳴き声がさっきより近い気がする。
「グギャア! グギャア!」
「!」
気のせいじゃない!
さっきより、絶対近い。
「グギャア! グ……!」
奇妙な鳴き声が、背後の草むらで止ったのを感じる。自然と冷や汗が流れ出す。なんなの? もしかして、熊?
(でも、待って。落ち着いて、もしかしたら安全な生き物かも知れないじゃない。熊とかじゃなくて、う、うさぎ……はないか。鳥! ただの大きな鳥かも! 鳴き声は鳥っぽいし、きっとめずらしい鳥よ!)
「グルルル……」
「……っ!」
唸り声が響いた瞬間、私は駆け出していた。
違う! 絶対、鳥じゃない! 熊? 狼? 野良犬? そんなのどうでも良い! とにかく、逃げなきゃ!
駆け出した私の背後から、大きな羽音が聞こえてきた。



