「風間さん、確認しておくけど、ここを確保したのは、同盟に関しての密談ってことでいいんだね?」
「はい。この国――倭和(ヤマト)国にはそう説明してあります」

 花野井は怪訝な顔をした。

「倭和の立会人はどうした?」
「金で買収してあります」
「ハッ! どこの国も官吏にはやっぱそれか」

 悪びれたようすのない風間の笑みに、花野井は失笑を投げかけた。その声音からは、嫌悪感が満ち満ちている。風間個人にではなく、官吏にといったところだろう。
 そんな花野井を横目で見やって、黒田は生意気そうな笑みを浮かべた。

「――んじゃあ、こっからが本題ね。魔王が無事憑依したら、誰がどうやってそれを手にするのか決めようじゃんか」

 挑発まじりの表情に、彼らは黒田の次の言葉を予想した。しかし、その言葉を放ったのは、まったくの別の人物だった。

「単純明快であろう。――戦えば良い」
 
 セリフをとられた黒田は若干むっとした表情で口を窄めたが、同時に怪訝でもあった。少し意外な気がしたからだ。黒田含め、この場にいる中で毛利がもっとも戦闘能力に劣っているという印象があったし、それは風間と毛利以外の全員の総意でもあった。

「文官のくせに、良いのかよ?」

 口の端を持ち上げて、花野井が試すように笑う。
 毛利は僅かながらに片眉を持ち上げた。

「盗賊風情に負けはせぬ」
「だから山賊だっ!」

 わざとの言い間違いに、花野井は律儀に応えた。
 そんな大人二人を一瞥して、黒田が吐息交じりに賛同をはき出す。

「ま。それが一番だね。力を欲する者達が集まったんだもん。力で形をつけるのが当然かもね」

 一同が頷く中で、雪村だけは複雑な表情でいたが、何かを言うことはなかった。
 
「――そういうことで。各自、時が来るまで自由に過ごしていただき、時間になったら南の庭園に集合してください。その際、くれぐれもお付きの者は連れてこないで下さいね」

 風間の警告を最後に、一同は解散した。