「新井先生には、あなたと同い年の娘さんがいてその子が春香さんが亡くなった
その日に大けがを負ったの。」

俺と同い年の、娘さん・・

その言葉がなぜか引っかかった。

「生死をさまようような大けがだったって・・。
その知らせを聞いたとき、新井先生は春香さんの診察をしてたのよ・・。」

それって・・。

「娘さんのけがに動揺して、母さんの異変を見落としてしまったかもしれないてこと?」

俺がそう聞くとおばさんは静かにうなずいた。

そんな・・

嘘だろ・・

ずっと信じてたのに、俺も父さんも・・

俺は裏切られた気分だった。

あれ?

でも、さっきおばさんはこの話を父さんから聞いたって・・

「父さんは俺に『新井先生は悪くない』って言ってた・・
どういうこと?
父さんは俺に嘘をついてたってこと?」

「そうね。陽向がそう思う気持ちもわかる。
でも、正平はあなたに嘘をついてたわけじゃない。
新井先生は悪くないって言葉は正平の本心だと思うわ・・」

「どういうこと?」

俺はさっぱり意味が分からなかった。

その先生は母さんの異変を見落とした。

俺と父さんから母さんと産まれてくるはずだった弟を奪った。

それなのになんで父さんは、新井先生のことを『悪くない』って言えるんだろう?

俺は、新井先生を絶対に許さない。