夏は嫌いだ。
暑いし、汗でベタつくし、制服が透ける。それに、ついつい冷たいものが欲しくなり、お腹をこわしてしまう。

だが、何より嫌なのが……

「おーい、モナコー」

コイツだ。

大きくて低い声、少し小さめの背、茶色がかった短髪。風でなびく髪の毛から、ちょっと下にキリッとした眉があって、彼のイケメンさをより引き立てている。

少年の名は、タクヤ。私と同じ高校1年生で、私のいとこにあたる。
見た目通りのやんちゃボーイだ。オマケにサッカー馬鹿。今回も1年生からレギュラーメンバーに入れるように練習を頑張っているらしい。

そんな彼が、毎年。夏休みになると私の家に遊びに来る。
タクヤとは高校も違うし、家も遠いため、会うのは毎年この期間だけ。

正直、めちゃめちゃ嫌だ。
(普通、女子の家に男子泊めたりする?)
と、私は毎回疑問に思っている。

「タクヤ、早くしてよー。あんたサッカー部でしょうが、早く走ってみなさいよ」

のそのそと歩くタクヤに私が釘を打つと、サッカー魂に刺さったのか、ものすごいスピードで私の所に近づいてきた。そして、20秒もしない間に到着。

「怖っ、バケモンかよ‪w」
「お前が早くしろって言ったんだろうが」

遠くでは見えなかったが、タクヤはパンパンのリュックサックを背負っていた。プラス スーツケースをガラガラと引いていたため、相当重かったはずなのによく走れたなと思わず感心してしまった。

だが、当然、呼吸は、不安定。

「なんか、……ごめんね」
タクヤがハァハァしているのを見ると、普通に、罪悪感。
「こんなの全然ヨユーだわ‪。
俺をなめんなよー、お前がなんかヤラかしたらすぐ駆けつけたるから安心しろよー、あほモナコ」
「は〜?言っときますが、あなたより成績はめちゃめちゃ上だしめちゃめちゃいい子ですから」
「スポーツは、俺の方が上」
「今は私がアホじゃないってことを説明してんのに、スポーツ持ち出さないでよね。1000歩譲って私がアホでも、アンタの方がヨユーでアホだから。あほタクヤだから」
「はいはい、分かったから行こー、俺はらへった〜」
「ちょっと待ってよ、まだ話は終わってない!!」

すると、タクヤの顔がムスッと不満そうな形になった。

「俺、そういう意味で言ったんじゃないんだけど」
「ん?」
「なんでもねー、行こ。もう腹が限界。今ならお前の作った飯も食えるぞ。」
「まずいみたいな言い方してー」
「だって不味いんだもん。」
「でも、私だって練習したんだから、ちゃんと食いなさいよー。」
「作ったのかよ。」
「さぁさぁ、私の絶品料理が待ってるよ〜。」
「遺書かかないとだな」
「おい‪w」
「笑笑」