私の退院祝いとは名ばかりで、梨乃と高峰さんは盛り上がっている。

何がどうなってここまで仲よくなったのかは知らないが、でもそのおかげで、私と神藤さんの間にあった微妙な空気も、取り払われている気がする。


空いた皿を流しに運び、洗っていたら、神藤さんが冷蔵庫のビールを取りにきた。



「あいつら、騒ぎすぎだろ。苦情きたらどうすんだよ」


神藤さんは、怒るというよりは、呆れ顔だ。



「お前も、そんなのいいから座っとけ。一応、主役だろ?」

「んー。でも、あのふたりの邪魔しちゃ悪いかなって。それに、何か、ここに立ってたら日常が戻ってきたみたいで、安心するし」


私の言葉に、神藤さんは肩をすくめて見せ、新しいビールのプルタブを開けた。

そして、残されていた唐揚げをつつく。



「あ、それ、おいしいでしょ。隠し味で秘伝のナントカを使ってるんだって。梨乃が作ったの。梨乃ね、あれで一応、弁当屋の娘だから、何でも作れちゃうんだよ」

「ふうん。揃いも揃って見かけによらないんだな。お前らって、喋ったらバカ丸出しなのに、実は家庭的なんてなぁ」

「悪口じゃん」


なのに、神藤さんはふっと笑うだけ。

ここだけ切り取られたように静かだった。