「はぁ~」
外に出た私は体内に溜まった空気を全部吐き出すように長い溜息を吐いた。
まだあの何ともいえない男臭さが鼻に残っている。
明日あんな人たちと同行するのかと思うと今から憂鬱な気分だ。
しかもラグはもっと強い人を御希望のよう。
(確かに強い人の方が安心だけどさ……)
私はもうひとつ小さく息を吐いてラグに訊く。
「ねぇ、ルバートって遠いの?」
「オレの足で2日くらいだ」
「そんなに!? 車は……馬車とかってないの?」
「アホ。あんなの貴族が乗るもんだ。目立ってしょーがねぇ」
「そうなんだ……」
がっくり肩を下ろす。
思い出したようにマメの潰れた足が痛み出した。
それを紛らわすためにも私は質問を続けた。
「ルバートってどんなところ?」
「港町だ。グラーヴェと同じくらい栄えてる。そこから海を渡る」
「海!?」
思わず大きな声が出てしまった。
「なんだ、お前の世界じゃ海が珍しいのか?」
ラグが怪訝そうに振り返る。
「ううん、そういうわけじゃなくて……」
「ならでかい声出すな。ったく」
そしてラグはまた前を向いてしまった。
(そっか、この世界にも海があるんだ)
今日ずっと山の中にいたせいか、この世界の海がすぐには想像できなかった。
――どうやらこの異世界で航海まで経験することになりそうだ。
(私、ちゃんと日本に帰れるの……?)
行き先の不安に、私はまたも深い溜息を吐いていた。



