「あ、あの……」

 そのとき遠巻きに見ていた人々の中から声が上った。
 兵士がおもむろにそちらを向く。声の主は初老の男性だった。

「その異国の服を着た娘、突然そこに現れたんだ」

 そう言いながら不安げな表情で私の足元を指差す。
 周りの人々も一斉にうんうんと頷いた。

「ま、まさかその娘、伝説の、銀のセイレーン……なのでは」

(銀のセイレーン?)

 男性の声は徐々に尻すぼみになっていったが、確かにそう聞こえた。

「そうよ!」

 また別のところから声が上がる。今度は女の人だ。

「だってその子、銀髪じゃない!」
「へ?」

 思わず気の抜けた声が出てしまっていた。
 私の髪の毛は昔から真っ黒だ。学校も親も厳しくて、染めたことなど一度もない。……はずなのだが。
 恐る恐る頭の後ろに手を回し一つに結っていた髪の毛を確認する。
 自分の目を疑った。

 確かに銀髪――見事なシルバーブロンドだったのだ。