「あとお前が銀のセイレーンってことも絶対に言うな。また昨日みたいなことになりたくなけりゃな」

 放り投げた木の実を器用に口でキャッチしながらラグは言う。

「その銀のセイレーンって何なの? 何で皆私の事……」

 この世界に来て何度も聞いた“銀のセイレーン”。
 今の時点でわかっているのは、私が使った魔法のような力。あれを持っているのがその銀のセイレーンだということ。
 それとこの世界ではなぜか髪の毛が銀色に変わることくらいだ。
 それを見て驚くのはわかる。でもなぜ皆あんなにも怖がるのか、それが不思議でならなかった。

「銀のセイレーンは異世界から現れてこのレヴールを破滅させる存在だと言われている。歌が不吉だとされるようになったのもそのせいだ」

 ……破滅?

 ぽかんと開いてしまった口に気付き慌てて閉じる。
 いきなり話のスケールが大きくなりすぎて、頭がすんなり受け入れてくれない。

「以前実際に現れた銀のセイレーンによってひとつの国が滅びかけたらしい。そこの王子が犠牲になったって話だ」
「え!? じゃあ前にも私みたいな人がいたってこと?」