「行けるところまで一気に行くぞ。落ちねぇようにしっかり掴まってろよ。特にカノン、わかったな!!」
「わ、わかってるよ!」
いつの間にか頬に伝っていた涙を拭って、私は大きな声で答えた。
ラグと一緒にいると、感傷に浸る暇も無いみたいだ。
それでもこの国にいる短い間に随分と彼を見る目が変わった気がする。そして色々な彼を知った気がする。
(ちょっと前までただ怖くて自信家で冷たい人だと思ってたもんね)
私はひとり小さく笑いながらその大きな背中を見つめた。
きっと、この世界にいる間もっと色々な彼を知ることになるのだろう。
そしてこの世界のことも。
特に次の目的地――ストレッタではもっと多くのことを知ることになる、そんな予感がした。
と、後ろから私を通り越してラグへ声が掛かった。
「おい。いきなり飛ばすのもいいが、そろそろ腹が減ったぞ。適当な場所で降りてまずは腹ごしらえだ」
「~~こんの大食い女が! 少しは我慢しやがれ!!」
「大食いとは失礼な。美食家と言ってくれ」
「心底どっちでもいい!! とにかく限界まで進むぞ! オレは早くあの野郎を見つけて、この呪いを解きたいんだ!!」
「ははは、寝ぼけたことを。それは私が断固阻止すると言っているだろう。うん。やはり先に飯にしよう。ついでに久しぶりにゆ~っくり宿のベッドで寝るというのはどうだ?」
「~~……!!」
私を挟んでの二人の言い争いはまだまだ続くようだ。
私はこっそり苦笑しながら首を竦め、その決着がつくのを黙って待つことにした。
すでに遠くに見えるフェルクレールトの大地が夕日に照らされ赤く赤く輝いていた――。
「My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ Ⅰ」【完】



