「ビアンカ、お願いします」
ライゼちゃんが首を優しく撫でながら言うとビアンカはそれに答えるようにチロリと赤い舌を出し、背中の大きな翼をゆっくりと動かし始めた。
「皆元気でな。あぁ、ライゼ。料理とても美味かったぞ」
「ありがとうございます。セリーンさんも、どうかお元気で!」
ビアンカが起こした風を全身に受けながら二人の会話を聞き、私は最後何を言おうかと焦って考える。でもすぐに風によって巻き上がった葉や砂ぼこりで目を開けていられなくなる。
そうこうしているうちにビアンカが地面を離れたのがわかった。
「ら、ライゼちゃん!」
「カノンさん! 本当に、本当にありがとうございました! カノンさんのことは一生忘れません!!」
激しい風音の中聞こえたライゼちゃんの大きな声。
私は思わず涙があふれてくるのを感じながら、大きな声で叫んだ。
「私も! 絶対に忘れない!! ライゼちゃん、皆、元気でね――!!」
――次に目を開けた時、目の前には赤い大空が広がっていた。
そして真下には深く広い森。もうそこにライゼちゃんたちの姿は確認できなかった。
でもその森の向こうに空と同じ赤い色に染まった海と、小さくベレーベントの村が見えた。
そのときふと、この国にはこの赤い色が似合うと思った。
闇の民だなんて呼ばれているけれど、ライゼちゃんの瞳の色と同じ“赤”が、このフェルクレールトの国にはぴったりだと、そう思った。



