My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1


 そのとき慌てたような声を上げたのはヴィルトさんに支えられたブライト君だ。

「そうです! 朝言いそびれてしまいましたが、体を治してくださってありがとうございました! お陰で命拾いしました」

 そう頭を下げるブライト君だったが、ラグが何か答えるよりも早く再びラウト君が大きな声を上げた。

「あ! そうだ、お兄さん! 最後にお願いがあるんだ!」
「あ?」

 怖いもの知らずなラウト君が目をキラキラさせてラグを見上げている。

「最後にさ、ブゥを触らせてもらっていい?」

 そういえば最初に会った時もラウト君はブゥを触りたがっていた。でもブゥはそれを嫌がり逃げてしまったのだ。
 今ブゥはラグの上着のポケットでお休み中のはず。初めいつもの髪の結び目でぶら下がり寝ていたのだが、ビアンカに乗る直前ラグがそこから引きはがし2日ぶりに着た上着のポケットに仕舞うのを見た。

(ラグ、どうするんだろう?)

 不機嫌そうに眉に皺を寄せていたラグだったが、

「……起こすなよ」

そう言ってポケットからブゥを取り出し、ラウト君にぽいと投げてよこした。
 起こすなと言いながら投げるのかいっ、と思わず突っ込みを入れそうになったが、難なくそれをキャッチしたラウト君はその両手のひらに収まった小さなブゥを見下ろして、興奮したように顔を赤らめていた。
 余程触りたかったのだろう。自然顔がほころんでしまった。
 こんな子供らしい彼だけれど、たまに見せる大人びた表情、そしてこの怖いもの知らずな性格があればきっと、彼のこの国を変えたいという強い想いを現実のものにしてくれるだろう。

「さぁラウト、そろそろお返ししなさい」

 ライゼちゃんが言うと、ラウト君は十分満足したのかすぐに頷き手を伸ばしてラグにブゥを渡した。

「ありがとうね、お兄さん。すっごく可愛かった!」
「あぁ」

 小さく頷きブゥを再びポケットに仕舞ったラグは続けて「じゃ、行くぞ」と私たちに向かい声を掛けた。