My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1



 そして、とうとうこのフェルクレールトを離れる時が来た。

「皆さん、本当にありがとうございました」

 ライゼちゃんがもう何度目か、私達に頭を下げる。

 ――此処は森の奥、ビアンカの棲む祠の近くだ。

 私たちはすでにその白く大きな巨体に跨っていた。先頭にラグ、真ん中は私、後ろにセリーンといういつもの順番。
 ビアンカはライゼちゃんとラウト君が呼びかけるとすぐに祠から出てきてくれた。二日ぶりに見る彼女はやはりとても迫力があり硬い鱗に足を引っ掛け乗り上がる際、思わずごくりと喉が鳴ってしまった。
 今この場にはライゼちゃんとラウト君、そして重傷のブライト君もヴィルトさんに支えられて見送りに来てくれていた。

「ううん! 私、子供たちに歌を教えてあげられてとても嬉しかった! これからも大変だと思うけど頑張ってね!」
「はい、カノンさんもどうかお元気で! 無事元の世界に帰れるようこの地より祈っています」
「ありがとう!」

 笑顔を交わす私たち。
 この地にいたのはたったの3日。なのにとても名残惜しくて、笑顔を崩したらなんだか泣いてしまいそうだった。
 じっとりと汗ばむこの暑さとももうお別れだと思うと少し寂しい気もする。

 そのとき、それまでずっと黙っていたラウト君が思い切るようにして声を上げた。

「お姉さん! 僕決めたんだ」
「え?」
「朝お姉さんが言ってたでしょ? お姉さんの世界でも昔この国と同じような国がたくさんあったって!」
「う、うん」

 確かに、今朝そんな話をした気がする。あの時は気持ちが高ぶっていて勢いに任せて一人べらべらと喋ってしまったけれど……。