足を進めながらふと思い出し髪の毛を確認する。……何の変哲も無い黒髪。
 ひょっとすると歌ったときにだけ銀色に変わるのかもしれない。

(呪いに、魔導術かぁ……)

 こちらの世界は本当に不思議なことばかりだ。
 それに、エルネストさん。
 彼も幽霊のような不思議な姿で現れた。

「ラグってエルネストさんの何?」
「エルネスト? 誰だ?」

 逆に怪訝な声で訊き返され戸惑う。
 エルネストさんはラグが助けに来る事を知っていた。
 だから二人は知り合いだと思っていたのだが、違うのだろうか。

(あれ?)

 それなら、何でラグは私を助けてくれたのだろう。

「ねぇ、」
「もう喋んな!」

 またきつく言われてしまい私は仕方なく口を噤む。
 するとラグがこちらを振り向き釘をさすように言った。

「もう夜が明けちまったんだ。さっきの兵士が追って来てるかもしれねぇ。それにな、こんな山ん中じゃモンスターがいつ出て来てもおかしくねーんだ。わかったな」

 言われて私はドキリとする。
 夜散々追いかけられた兵士たちの姿が頭を過ぎる。
 眠っていたせいか、まるで悪夢を見ていたような気がするけれど。

 でも違う。これは夢じゃない……。